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住民10人、猫100匹。青島という小さな楽園

愛媛県大洲市の沖合、伊予灘に浮かぶ周囲わずか4.2kmの小さな島。青島(あおしま)は、猫の数が人間の数を圧倒的に上回る島として、世界中のメディアに取り上げられてきました。

船が港に着いた瞬間、猫たちが足元に集まってくる。道を歩けば猫がついてくる。塀の上にも、軒下にも、漁具の隙間にも猫がいる。「猫の楽園」という言葉がこれほど似合う場所は、日本にそう多くはありません。

ただし、この楽園はいま、静かに終わりに向かっています。この記事では、青島の歴史と猫たちの現在、そして訪れるために知っておくべきことを記録します。

目次

青島の歴史──漁師が拓いた小さな島

青島の面積は0.49km²。瀬戸内海の伊予灘に位置し、大洲市長浜港から約13.5km沖合にあります。

もともとは無人島でした。1617年(元和3年)、大洲藩が馬の牧場として利用したのが人の関与の始まりとされています。転機は1639年(寛永16年)。鰯の好漁場であることが知られるようになり、播州坂越村(現在の兵庫県赤穂市坂越)から与七郎という漁師が一族郎党16戸を率いて移住しました。以来、青島は鰯漁を中心とする漁村として発展していきます。

最盛期は1942年。人口889人を数え、島は活気に満ちていたといいます。しかし戦後、漁業の衰退とともに人口は減少の一途をたどりました。若者は本土へ渡り、高齢化が進み、島は静かに縮んでいきました。

なぜ猫がこれほど増えたのか

青島に猫が持ち込まれた理由は、田代島――猫が神になった島のドキュメントと同じです。漁船に巣食うネズミを駆除するためでした。漁師にとってネズミは網を齧り、食料を荒らす厄介な存在です。猫はその天敵として、漁業の現場に不可欠な存在でした。

問題は、島が小さすぎたことです。面積わずか0.49km²の閉鎖的な環境で、避妊・去勢手術を受ける機会もなく、猫は自然繁殖を繰り返しました。天敵もいない。交通事故もない。猫にとっての生存条件が整いすぎていたのです。

結果、2010年代には猫の数が200匹を超えるまでに増加。住民が10人前後にまで減少した島で、猫と人の比率は20対1に達しました。この異様な比率が海外メディアの目に留まり、「Cat Island」として世界中に拡散されたのです。

  • 猫の由来:漁船のネズミ駆除のために持ち込まれた
  • 繁殖の要因:避妊・去勢なし、天敵不在、温暖な気候
  • ピーク時:2018年時点で約220匹が確認された
  • 人口比:猫と人間の比率が最大で20対1に達した

世界が注目した「Cat Island」

青島が国際的に知られるようになったのは2013年頃からです。訪問者がSNSに投稿した写真や動画が拡散し、BBC、CNN、ロイターなど海外の主要メディアが相次いで取り上げました。「日本には猫が人間を支配している島がある」という文脈で紹介され、猫好きの間で世界的な聖地となったのです。

しかし、注目は功罪の両面を持ちました。定員わずか34名の定期船に観光客が殺到し、乗船できない人が続出。島民の生活空間に観光客が入り込み、猫への無秩序な餌やりが問題化しました。島には売店も自動販売機もトイレも十分にはありません。インフラが観光に対応していないのです。

大洲市は観光客の立ち入りエリアをカラーコーンで制限し、島民の生活区域と分離する措置を取りました。日本の猫島完全ガイド。人口より猫が多い島の地図が直面する「猫観光の功罪」が、青島では最も先鋭的な形で表れたといえます。

猫たちの現在──楽園の終わりに向かって

2018年、大洲市と動物愛護団体が連携し、島の猫の一斉不妊手術が実施されました。手術対象となったのは約160匹。これにより新たな子猫が生まれることはなくなり、猫の数は自然減少に転じました。

2024年末時点で、島の猫は約80匹にまで減少しています。全頭が7歳以上の高齢猫であり、その3分の1は近親交配に起因する疾患――失明、呼吸器疾患、免疫不全など――を抱えているとされます。新たな命が生まれることはなく、猫たちは一匹ずつ、静かにこの島から消えていきます。

人間の側も同様です。2024年末時点の住民は4人。全員が75歳以上です。医療機関はなく、商店もなく、島を維持するインフラそのものが限界を迎えています。「あと数年で、人も猫もいなくなる」。それが、いま多くの関係者が語る青島の未来です。

楽園は永遠ではありません。しかし、猫と人間がこの小さな島で共に過ごした時間は、確かにここにありました。

青島へのアクセス

青島へは、愛媛県大洲市の長浜港から定期旅客船「あおしま」で渡ります。

  • 最寄り駅:JR予讃線 伊予長浜駅(松山駅から約1時間)
  • 乗船場:長浜港(伊予長浜駅から徒歩約2分)
  • 所要時間:長浜港から青島港まで約35分
  • 運航本数:1日2便(第1便 長浜港08:00発→青島08:35着/青島08:45発→長浜港09:20着、第2便 長浜港14:30発→青島15:05着/青島16:15発→長浜港16:50着)
  • 定員:34名(先着順・予約不可)
  • 運賃:片道約700円(大人)
  • 運航情報大洲市公式サイト

松山空港や松山駅からの場合、JR予讃線で伊予長浜駅へ向かいます。駐車場は国道378号線沿い・長浜交番横に無料の定期船利用者専用駐車場があります。日帰りが基本で、島内に宿泊施設はありません。天候や波の状態により欠航が多い航路のため、出発前の運航確認は必須です。

訪問時の注意点──島のルールを守ること

青島は観光地ではなく、島民の生活の場です。以下のルールは必ず守ってください。

  • 立ち入り制限:島民の居住エリアはカラーコーンで区切られています。指定区域外には入らないでください
  • 餌やりのルール:猫への餌やりは禁止されていませんが、指定のエサ場で行ってください。出たゴミは必ず持ち帰ること
  • 飲食物の持参:島に売店・自動販売機・飲食店はありません。飲み物と食料は必ず長浜で購入してから乗船してください
  • トイレ:島内のトイレは限られています。乗船前に済ませておくことを推奨します
  • ゴミの持ち帰り:島にはゴミ処理施設がありません。持ち込んだものはすべて持ち帰ってください
  • 猫の持ち出し禁止:島の猫を連れ帰ることは禁止されています
  • 定期船の定員:34名の先着順です。繁忙期は乗船できない場合があります。早めに港に到着してください

島民は全員が75歳以上の高齢者です。島には病院もなく、万一のトラブルに対応できる体制はありません。「お邪魔している」という意識を常に持ち、静かに、短時間で訪問することが大切です。

引用・出典

よくある質問(FAQ)

Q. 青島の猫はまだたくさんいますか?

2018年に約220匹が確認されましたが、同年の一斉不妊手術以降、新しい子猫は生まれておらず、自然減少が続いています。2024年末時点で約80匹まで減少しており、全頭が7歳以上の高齢猫です。近親交配による疾患を抱える猫も多く、今後さらに減少していくことが確実視されています。「猫がたくさんいる島」としての青島を見届けられる時間は、残りわずかかもしれません。

Q. 青島に日帰りで行けますか?

日帰りが基本です。島に宿泊施設はありません。定期船は1日2便で、第1便(08:00発)で渡って第1便の折り返し(08:45発)で戻るか、第2便(14:30発)で渡って16:15発で戻るかの二択です。島での滞在時間は第1便で約10分、第2便で約1時間10分となります。実質的には第2便を利用し、約1時間の滞在が標準的なプランです。定員34名・先着順のため、第2便利用の場合は14:00前には長浜港に到着しておくことをおすすめします。

Q. 田代島――猫が神になった島のドキュメント佐柳島の「飛び猫」を追って。瀬戸内海の猫写真旅との違いは何ですか?

いずれも「猫島」として知られますが、性格は大きく異なります。宮城県の田代島は猫神社を中心に猫が信仰の対象となっており、漁業文化と猫が深く結びついた歴史的な島です。香川県の佐柳島は「飛び猫」の撮影地として写真愛好家に人気があります。一方の青島は、猫の密度が圧倒的に高いことで知られましたが、不妊手術の実施により終わりが見えている点が他の猫島と決定的に異なります。「いま行かなければ見られなくなる島」という切迫感が、青島にはあります。

まとめ

青島は、猫が人間を数で上回るという異様な光景で世界の注目を集めました。漁業のために持ち込まれた猫が、閉鎖的な島の環境で爆発的に増え、やがてSNSの力で「Cat Island」として世界に知られるようになった。しかし、不妊手術の実施と島民の高齢化により、この楽園は確実に終わりに向かっています。

2024年末時点で住民4人、猫約80匹。全頭が高齢猫で、新しい命が生まれることはありません。「住民10人、猫100匹」という牧歌的な風景は、すでに過去のものになりつつあります。

それでも、この島に行く価値はあります。猫と人間が小さな島で共存した時間の最後の断片を、自分の目で見届けること。それは観光ではなく、記録です。青島が教えてくれるのは、楽園は人間がつくり、人間が終わらせるということかもしれません。

日本の猫島完全ガイド。人口より猫が多い島の地図

田代島――猫が神になった島のドキュメント

佐柳島の「飛び猫」を追って。瀬戸内海の猫写真旅


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執筆:URAYAMA NO NEKO / Tetsu Onodera

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