旅先を決めるとき、何を基準にしますか? ビーチの美しさ、食事のおいしさ、歴史的建造物──理由はさまざまでしょう。でも、もし「猫に会えるかどうか」が最優先だとしたら? 世界には、猫が街の主役になっている場所がいくつもあります。路地を歩けば猫がついてくるイスタンブール、廃坑が猫の楽園になった台湾の猴硐、古代遺跡に猫がくつろぐローマ。この記事では、猫好きの視点で選んだ世界の旅行先を紹介します。観光ガイドブックには載らない、「猫に会うための旅」のすすめです。
イスタンブール(トルコ)──世界一猫に優しい街
猫旅の最高峰は、間違いなくイスタンブールです。推定12万5,000匹以上の猫が暮らすこの街では、猫に会えない場所のほうが珍しい。イスタンブールは猫の首都だった。世界一猫に優しい街の記録で詳しく書きましたが、この街の猫は「野良」ではなく「街の共有財産」として扱われています。
猫好きにおすすめのエリア
- スルタンアフメット地区:アヤソフィアやブルーモスク周辺。観光客にも人馴れした猫が多く、猫のほうから近寄ってきます
- カドゥキョイ地区:アジア側の下町エリア。地元の魚市場周辺には大量の猫が集まります
- グランドバザール周辺:商店の軒先に猫が常駐。店主と猫の関係を観察するのが楽しい
- ガラタ塔周辺:坂道の多いエリアで、石畳と猫の組み合わせが絵になります
ベストシーズン
4〜6月と9〜10月。夏は猛暑で猫も日陰に隠れがち。春と秋は猫も活動的で、街歩きの気候としても最適です。
猫旅のコツ
映画『Kedi』(2016年)を事前に観ておくと、イスタンブールの猫文化への理解が深まります。猫用のおやつを持参すると、あっという間に猫に囲まれますが、地元住民が日常的に餌やりをしているため、与えすぎには注意しましょう。
猴硐(ホウトン)猫村(台湾)──炭鉱跡が猫の楽園に
台北から電車で約1時間。新北市にある猴硐(ホウトン)は、CNNが「世界6大猫スポット」に選んだ猫村です。
もともとは炭鉱の村で、閉山後に過疎化が進んでいました。しかし、坑道のネズミ退治のために飼われていた猫たちが繁殖し、100匹以上の猫が暮らす村として再生したのです。世界の猫文化比較──日本・トルコ・エジプト・イギリス・台湾。同じ「猫好き」でも、こんなに違うでも触れましたが、猴硐はSNS時代の「猫による村おこし」の成功例として世界中から注目されています。
猫好きにおすすめのポイント
- 猫橋(猫天橋):駅から猫村へ続く陸橋。猫型の窓やキャットウォークが設置されています
- 村内の路地:壁画やオブジェが点在。猫が思い思いの場所でくつろいでいます
- 猫グッズショップ:地元アーティストが作った猫モチーフの雑貨が買えます
訪問時の注意
猫村のルールとして、フラッシュ撮影禁止、猫への餌やりは指定場所のみ、猫を追いかけない、という3点が掲示されています。ボランティア団体がTNR(捕獲・不妊手術・返還)を行い、猫の健康管理をしているため、そのルールを尊重しましょう。
ローマ(イタリア)──古代遺跡に暮らす猫たち
ローマには約30万匹の野良猫が暮らしていると推定されています。特に有名なのが、トッレ・アルジェンティーナ広場(Largo di Torre Argentina)の猫コロニーです。
この広場は紀元前4世紀のローマ神殿の遺跡であり、ジュリアス・シーザーが暗殺された場所としても知られています。その遺跡の中に、約150匹の猫が暮らしている。ボランティア団体「Torre Argentina Cat Sanctuary」が1993年から猫の保護活動を行い、遺跡内の猫の去勢手術、治療、里親探しをしています。
猫好きにおすすめのエリア
- トッレ・アルジェンティーナ広場:遺跡の中の猫保護施設。寄付をすると施設内を見学できます
- コロッセオ周辺:フォロ・ロマーノの遺跡にも猫が出没。古代ローマと猫の組み合わせは格別です
- トラステヴェレ地区:下町の路地裏に猫が多い。レストランのテラス席に猫がやってくることも
ローマでは2001年に法律で野良猫の殺処分が禁止され、猫コロニーには法的な保護が与えられています。古代遺跡と猫の共存は、ローマ市民にとって当然の風景なのです。
マラケシュ(モロッコ)──迷宮都市の猫
モロッコのマラケシュも、知る人ぞ知る猫の街です。イスラム文化圏であるモロッコでは、トルコ同様に猫は「清浄な動物」として大切にされています。
旧市街メディナの迷路のような路地を歩くと、至るところに猫がいます。スーク(市場)の商人の足元、リヤド(伝統的な邸宅ホテル)の中庭、カフェのテーブルの下。マラケシュの猫は人馴れしていて、観光客にもフレンドリーです。
猫旅のポイント
- ジャマ・エル・フナ広場周辺:夜になると屋台が並び、食べ物を求めて猫が集まります
- マジョレル庭園:イヴ・サンローランが愛した庭園。庭に猫がいることもあります
- メディナの路地:目的地を決めずに歩くのが一番。猫に導かれるままに迷うのがマラケシュ流です
田代島(日本)──猫神様の島
海外だけではありません。日本にも世界に誇る猫旅の目的地があります。宮城県石巻市の田代島は、人口50人に対して猫が100匹以上暮らす「猫の島」です。
日本の猫島完全ガイド。人口より猫が多い島の地図で詳しく紹介していますが、田代島の猫文化は単なる「猫が多い場所」ではありません。島には猫神社(猫神様)があり、漁師たちが大漁を祈願して猫を祀ってきた歴史があります。猫を神の使いとして敬う信仰が、島全体の猫との関係性を形づくっているのです。
アクセス
石巻港からフェリーで約40分。1日3〜4便と本数が少ないため、事前に時刻表を確認してください。日帰りも可能ですが、島の民宿に泊まると夕方や早朝の猫に会えます。
その他のおすすめ猫旅先
| 場所 | 国 | 特徴 | アクセスのしやすさ |
|---|---|---|---|
| バレッタ | マルタ | 地中海の城塞都市に猫コロニー多数 | ★★★ |
| クアラルンプール | マレーシア | イスラム文化圏で猫を大切にする文化 | ★★★★ |
| アムステルダム | オランダ | 運河に浮かぶ猫の保護施設「De Poezenboot」 | ★★★★ |
| 青島 | 日本(愛媛) | 住民15人・猫100匹以上。究極の猫島 | ★★ |
| サントリーニ島 | ギリシャ | 白い建物×青い海×猫。絵になる猫スポット | ★★★ |
| コトル | モンテネグロ | 中世の城壁都市に猫博物館あり | ★★★ |
| フェズ | モロッコ | 世界最大のメディナに猫が無数に暮らす | ★★★ |
猫旅のマナーと心得
猫に会いに旅をするなら、守りたいマナーがあります。
- 猫を追いかけない:猫は追われると逃げます。座って待つのが猫と仲良くなるコツです
- フラッシュ撮影をしない:猫の目はフラッシュに弱い。自然光で撮影しましょう
- 現地のルールに従う:猫コロニーや保護施設には、それぞれのルールがあります。餌やりの可否、触れてよいかどうかを確認してください
- 保護活動に寄付する:猫スポットの多くはボランティアで運営されています。少額でも寄付は大きな支えになります
- 持ち帰らない:海外の猫を連れ帰ることは、検疫法の問題だけでなく、地域の猫コミュニティを壊す行為です。写真と思い出を持ち帰りましょう
猫旅は「その国の文化」を知る旅
猫に会いに旅をしていると、不思議なことに気づきます。猫の扱い方を見れば、その国の人柄がわかるのです。
イスタンブールでは猫は「みんなのもの」。台湾の猴硐では猫は「村おこしの主役」。ローマでは猫は「遺跡の同居人」。マラケシュでは猫は「メディナの案内人」。世界の「猫ことわざ」辞典。各国の猫への視線の違いを読み解くにも通じますが、猫への態度にはその国の価値観が映し出されています。
だから猫旅は、ただ「かわいい猫に会う」だけの旅ではありません。猫を通して、その土地の歴史、宗教、人間関係を知る旅です。次の休暇の行き先は、「猫に会えるかどうか」で決めてみませんか。きっと、ガイドブックには載っていない景色が見えてくるはずです。
よくある質問
Q. 猫旅で一番おすすめの場所はどこですか?
初めての猫旅なら、イスタンブールをおすすめします。猫の数が圧倒的に多く、街のどこを歩いても猫に出会えるため、「猫に会えなかった」という失敗がありません。食事もおいしく、歴史的な見どころも豊富なので、猫以外の楽しみも充実しています。日本国内なら田代島が最も確実に猫に会えるスポットです。
Q. 海外の猫に触っても大丈夫ですか?
衛生面のリスクはゼロではありません。海外の野良猫はノミやダニを持っている可能性があり、狂犬病のリスクがある地域もあります。触った後は必ず手を洗い、引っかかれた場合は消毒してください。猫から近づいてきた場合は問題ありませんが、嫌がる猫を無理に触るのは避けましょう。事前の狂犬病ワクチン接種も検討してください。
Q. 猫旅に持っていくべきアイテムはありますか?
望遠レンズ(猫に近づかなくても撮影できる)、猫じゃらし(小さくて軽いもの)、ウェットティッシュ(猫に触った後用)、小さなビニール袋(猫のおやつの包装ゴミ用)があると便利です。カメラは連写モードが使えるものがおすすめ。猫は一瞬で動くので、シャッターチャンスを逃さない準備が大切です。
まとめ
世界には、猫が街の主役になっている場所がたくさんあります。イスタンブールの路地猫、台湾の猫村、ローマの遺跡猫、マラケシュのスーク猫、田代島の猫神様。どの場所でも、猫は観光のために「配置」されたのではなく、その土地の歴史と文化の中で自然に暮らしてきた存在です。猫に会いに行く旅は、その国を最も深く理解する旅でもあります。次の旅行は、猫に導かれてみてください。
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執筆:URAYAMA NO NEKO / Tetsu Onodera

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