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ネコノミクス約3兆円。猫が動かす日本経済の内訳を解剖する

「ネコノミクス」と呼ばれる猫の経済効果が、約3兆円規模にまで成長しています。関西大学の宮本勝浩名誉教授の試算によれば、2026年の経済効果は約2兆9,488億円。これは大阪・関西万博の経済効果に匹敵する数字です。本記事では、この巨大市場の内訳を、キャットフード・医療費・グッズ・観光・メディアといったカテゴリごとに分解し、猫が日本経済に何をもたらしているのかを読み解きます。

目次

ネコノミクスとは何か──定義と背景

ネコノミクスとは、「猫(ネコ)」と「エコノミクス(経済学)」を組み合わせた造語です。猫の飼育に関する直接的な支出だけでなく、猫をモチーフにした商品、猫カフェ、猫目的の観光、メディアコンテンツなど、猫に関連するあらゆる経済活動の総称を指します。

この言葉が広く使われるようになったのは2015年頃。猫の飼育頭数が犬を初めて上回ったことが大きなきっかけでした。以来、毎年2月22日の「猫の日」に合わせて、関西大学の宮本名誉教授が経済効果を算出し、発表するのが恒例となっています。

市場規模の推移──2兆円から3兆円へ

ネコノミクスの経済効果は、年々拡大を続けています。

  • 2015年:約2兆3,162億円(猫が犬の飼育頭数を逆転した年)
  • 2022年:約1兆9,690億円(コロナ禍の影響で一時縮小)
  • 2024年:約2兆4,941億円(回復と拡大)
  • 2025年:約2兆9,086億円(過去最高を更新)
  • 2026年:約2兆9,488億円(さらに更新、3兆円目前)

2024年から2026年の2年間で約2割の増加。注目すべきは、猫の飼育頭数自体は横ばい〜微減であるにもかかわらず、経済効果が伸び続けている点です。これは「1頭あたりの支出額」が増加していることを意味しています。

約3兆円の内訳を解剖する

宮本名誉教授の試算では、ネコノミクスは「直接効果」と「波及効果」の2層構造で計算されています。2025年の数値をベースに、内訳を見ていきましょう。

直接効果:約1兆3,462億円

猫の飼い主が直接支出する費用の合計です。

  • キャットフード(主食・おやつ):最大の支出項目。プレミアムフードや療法食の普及により、単価が上昇傾向にあります。矢野経済研究所によれば、キャットフード市場は犬用を上回る成長率を記録しています
  • 動物病院・医療費:予防接種、健康診断、歯科治療など。猫の平均寿命が16.02歳(2025年)まで延びたことで、高齢猫の医療ニーズが増加しています
  • 猫砂・トイレ用品:消耗品として安定した市場。自動清掃トイレなどペットテック製品の登場で、単価は上昇中です
  • 猫グッズ・おもちゃ:キャットタワー、爪とぎ、ベッドなどの生活用品に加え、IoT連動の自動給餌器やカメラ付き見守りデバイスなど、テクノロジー系製品が新たな需要を創出しています
  • 猫カフェ・猫関連観光:約15億円。猫島(田代島、青島など)への旅行、猫寺巡り、猫カフェ利用などが含まれます
  • その他:ペット保険、トリミング、ペットホテルなど

波及効果:約1兆5,000億円超

直接効果から派生する二次的・三次的な経済効果です。

  • ペットフード製造業の売上・雇用:原材料の調達、製造、物流にかかるサプライチェーン全体の経済活動
  • 猫モチーフ商品:文具、食器、アパレル、お菓子など、猫デザインの商品群。コンビニ各社が「猫の日」に合わせた限定商品を展開するなど、年々拡大しています
  • メディア・コンテンツ:猫YouTuber、猫写真集、猫映画、猫漫画など。もちまる日記のようなチャンネルは数億回の再生数を誇ります
  • 不動産・住宅:ペット可賃貸の需要増、猫用リフォーム(キャットウォーク設置など)の市場も成長中です
  • テクノロジー:自動給餌器、健康管理IoTトイレ、GPS首輪などペットテック市場が急拡大しています

関連記事:猫が生み出す経済圏。フード・グッズ・観光・メディアの全産業マップ

猫の飼育頭数の推移──犬を抜いた構造的理由

ペットフード協会の「全国犬猫飼育実態調査」(2025年)によれば、日本の猫の飼育頭数は約884万頭。犬の約682万頭を大きく上回り、その差は約200万頭に広がっています。

猫が犬を逆転した5つの理由

  1. 単身世帯・共働き世帯の増加:散歩不要で留守番ができる猫は、現代のライフスタイルに適合しています
  2. 住環境の制約:マンション・アパートでも飼いやすい室内飼いの猫は、都市部の住宅事情に合っています
  3. 飼育コストの違い:犬の年間飼育費(約36万円)に対し、猫は約17万円と約半分。経済的なハードルが低いことも要因です
  4. 高齢化社会:散歩の体力的負担がない猫は、シニア層にとって飼いやすい存在です
  5. SNS・メディアの影響:猫動画・猫ミームの爆発的流行が、猫への関心を高めました

ただし、2025年の調査では猫の新規飼育頭数は33.3万頭と、前年の35.9万頭から減少しています。飼育頭数全体も884万頭と、前年の915万頭から減少に転じました。少子高齢化による飼育者層の縮小が、今後の課題となりそうです。

関連記事:なぜ日本は猫ブームなのか。犬を抜いた理由を社会学で読む

猫の日マーケティングが経済を動かす

毎年2月22日の「猫の日」は、ネコノミクスを加速させる最大のイベントです。1987年に制定されて以来、特に2020年代に入ってからは企業の参入が急増しています。

  • コンビニ各社:セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンがそれぞれ猫パッケージの限定商品を展開
  • 百貨店:伊勢丹、高島屋などが「猫フェア」を開催。猫グッズ売り場は年々拡大しています
  • 食品メーカー:猫型パン、猫型チョコレートなど季節限定商品が定番化
  • IT・テック企業:猫の日限定デザインやキャンペーンをSNSで展開

2022年の「スーパー猫の日(2022年2月22日)」は特に盛り上がり、この成功体験が毎年の猫の日マーケティングを加速させるきっかけとなりました。

関連記事:2月22日「猫の日」の全貌。1987年の制定から2026年の経済効果まで

海外との比較──日本のネコノミクスの特異性

世界のペット市場と比較すると、日本のネコノミクスにはいくつかの特異な点があります。

世界のペット市場規模

  • アメリカ:ペット市場全体で約1,500億ドル(約22兆円)。世界最大のペット大国
  • イギリス:猫の飼育頭数が犬を上回る「猫優位国」のひとつ
  • タイ:近年「ネコノミクス」が拡大中。猫原産種を国の象徴に指定する動きも
  • 日本:世界8位のペットケア市場(2023年、約8,107億円)

日本の特異性

  1. 「猫>犬」の文化的転換:かつて「犬派大国」だった日本が、わずか10年で「猫派」に転換した速度は、世界的にも珍しい現象です
  2. 猫モチーフ商品の多様性:招き猫文化に代表されるように、日本には猫を商業デザインに取り入れる伝統があり、商品バリエーションが圧倒的に豊富です
  3. 1頭あたりの支出の伸び:飼育頭数が横ばいでも経済効果が拡大し続ける構造は、日本のペット「家族化」の深化を示しています

ネコノミクスの今後──3兆円を超えるか

ネコノミクスが今後さらに拡大する要因と、縮小リスクの両面を整理します。

拡大を後押しする要因

  • ペットテックの進化:AI搭載の自動給餌器、健康モニタリングトイレ、GPSトラッカーなど、テクノロジー製品の単価が高く、市場を押し上げています
  • プレミアム化:フード、医療、保険すべてにおいて「うちの子にはいいものを」という消費者心理が働き、1頭あたりの支出が増加しています
  • 猫の長寿化:平均寿命が16歳を超え、高齢猫向けの医療・介護市場が新たなカテゴリとして成長中です
  • メタバース・デジタルコンテンツ:メタバース上の猫コミュニティ、NFT猫アートなど、デジタル領域での新市場も生まれています

縮小リスク

  • 飼育頭数の減少:2025年の調査で猫の飼育頭数が前年比で約31万頭減少。少子高齢化により、新規飼育者の母数が縮小しています
  • 可処分所得の停滞:欧米と比較して日本の可処分所得の伸びは鈍く、ペットへの支出余力に限界がある可能性があります

総合的に見ると、飼育頭数が緩やかに減少しても、1頭あたりの支出増と新カテゴリの創出によって、3兆円突破は時間の問題と考えられます。

引用・出典

FAQ

Q. ネコノミクスの経済効果はどうやって計算されているのですか?

関西大学の宮本勝浩名誉教授が毎年算出しています。計算は「直接効果」と「波及効果」の2層構造です。直接効果は、猫の飼育に関する支出(フード、医療、グッズ、猫砂など)に加え、猫カフェや猫目的の観光費用を合算したもの。波及効果は、ペットフード製造業や物流、猫モチーフ商品の製造・販売など、関連産業への二次的・三次的な経済効果を産業連関表をもとに推計したものです。両者を合わせた総額が「ネコノミクス」として発表されています。

Q. 猫の飼育頭数は減っているのに、なぜ経済効果は増えているのですか?

主な理由は「1頭あたりの支出額の増加」です。プレミアムキャットフードの普及、ペット保険の加入率上昇、IoT製品(自動給餌器、見守りカメラなど)の浸透、猫の長寿化による医療費の増加──これらの要因が重なり、飼育頭数が横ばい〜微減でも、市場全体は拡大を続けています。猫の「家族化」が進むほど、飼い主の財布のひもは緩みやすくなるのです。

Q. ネコノミクスは今後も成長し続けますか?

短期的には成長が続くと見られています。ペットテックの進化やプレミアム化のトレンドが1頭あたりの支出を押し上げるためです。ただし、中長期的には少子高齢化による飼育者層の縮小がリスク要因となります。新規飼育頭数は2025年に33.3万頭と減少傾向にあり、飼育頭数の減少が支出増を上回るタイミングが、ネコノミクスの転換点になるでしょう。

まとめ

ネコノミクスの経済効果は、2026年時点で約2兆9,488億円。大阪・関西万博に匹敵するこの数字は、フード・医療・グッズ・観光・メディアなど多岐にわたる産業が猫を軸に動いていることを示しています。飼育頭数は減少に転じたものの、1頭あたりの支出増とペットテックなどの新カテゴリの成長が市場を支えています。猫は、もはや「かわいい」だけの存在ではありません。日本経済を3兆円規模で動かす、静かで強力なエンジンです。

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執筆:URAYAMA NO NEKO / Tetsu Onodera

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