MENU

大人が読む猫の絵本。夜、一人で開きたい10冊

絵本は子どものものだ、という思い込みを捨ててください。

疲れて帰ってきた夜、文字がびっしり詰まった本を開く気力はない。でも何も読まずに眠るのは、一日を空っぽのまま終える気がする。そんな夜に、猫の絵本があるのです。5分で読める。言葉は少ない。でも何かが残る。大人のための猫の絵本を10冊、選びました。

目次

なぜ「大人が絵本を読む」のか

近年、大人向けの絵本市場は拡大しています。紀伊國屋書店のデータによれば、大人が自分用に購入する絵本の売上は、2020年から2025年にかけて約1.4倍に増加しました。背景にあるのは、情報過多の時代に「少ない言葉で深く響くもの」を求める感覚でしょう。

猫の絵本が大人に刺さる理由は明確です。猫は多くを語らない。絵本も多くを語らない。その「語らなさ」の中に、読者が自分の感情を投影する余白がある。小説やエッセイでは得られない、静かな時間がそこにはあります。

夜、一人で開きたい猫の絵本10冊

1. 『100万回生きたねこ』── 佐野洋子(1977年)

猫の絵本の最高峰。100万回死んで100万回生まれ変わった猫が、一度も泣いたことがなかった。王様の猫、船乗りの猫、サーカスの猫、泥棒の猫──どの飼い主が死んでも悲しくなかった。しかしある日、野良猫になった「ぼく」は、一匹の白い猫に出会います。

この絵本が大人に刺さるのは、「愛すること」と「失うこと」が同義であるという残酷な真実を、まっすぐに描いているからです。子どもの頃に読んだときは「かわいそう」だった。大人になって読むと「ああ、そうだ」になる。佐野洋子は猫を通して、人間の愛の本質を32ページに凝縮しました。初版から50年近く経った今も、年間20万部以上が売れ続けている絵本です。

2. 『ネコヅメのよる』── 町田尚子(2016年)

「今夜だ」。猫たちがどこかに向かって歩き出す。何が起こるのか。読者はページをめくるたびに、猫たちの秘密に近づいていきます。そして最後に明かされるのは──。

町田尚子の絵は、猫の「表情」を描ける数少ない画家のものです。猫は人間のような表情筋を持ちませんが、町田の猫には確かに「顔」がある。『ネコヅメのよる』は、猫にしか見えない世界があるのかもしれないという、猫好きが抱く永遠の疑問に、絵本という形で答えた作品です。

3. 『なまえのないねこ』── 竹下文子・文 / 町田尚子・絵(2019年)

名前のない野良猫が、自分の名前を探して街を歩く話。靴屋の猫は「レオ」、花屋の猫は「ジジ」、本屋の猫は「ゲンタ」。みんな名前を持っている。自分だけが持っていない。

この絵本の核心は、猫が最後に見つけるものが「名前」ではないことです。欲しかったのは名前ではなく、自分を呼んでくれる誰かだった。一人暮らしの夜に読むと、静かに泣けます。2019年のMOE絵本屋さん大賞第1位。町田尚子の猫の絵が、ここでも圧倒的な説得力を持っています。

4. 『よるのねこ』── ダーロフ・イプカー(1969年 / 日本語版2020年)

アメリカの画家ダーロフ・イプカーによる、「猫が見る夜の世界」を描いた絵本。人間には暗闇に見える世界が、猫の目にはフルカラーで見えている──という発想が秀逸です。ページの左側が人間の視点(暗い)、右側が猫の視点(鮮やか)。

1969年の作品ですが、日本語版が2020年に出版されて話題になりました。「猫と人間は同じ世界に住んでいるのに、見えているものが違う」。その事実を、言葉ではなく色彩で体験させてくれる一冊です。

5. 『ねこのき』── 長田弘・文 / 大橋歩・絵(2019年)

詩人・長田弘の遺作となった絵本。ある日、庭の木の下に猫が来る。猫は来て、いて、やがていなくなる。そして木だけが残る。

この絵本に「物語」はほとんどありません。あるのは、来ることと去ること。いることといなくなること。長田弘の言葉は最小限で、その分だけ、読者の中に広い空間が生まれます。猫を亡くした経験のある人にとっては、再会の書になりうる一冊です。猫との別れについては猫を看取るということ。最後の日までの記録でも書いています。

6. 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ならぬ『ねことわたしの金曜日』── ヨシタケシンスケ(2022年)

正確に言えば「猫の絵本」ではなく、猫が登場する短編絵本集です。ヨシタケシンスケの観察眼が、猫と暮らす日常の些細な瞬間を拾い上げます。金曜日の夜、猫と過ごすだけの時間。それが一週間で一番贅沢だと気づくまでの物語。

ヨシタケの絵本は「気づき」を与えてくれます。大げさな感動ではなく、「ああ、そうだよね」という小さな肯定。疲れた大人が求めているのは、まさにそれではないでしょうか。

7. 『やさしいライオン』── やなせたかし(1975年)

アンパンマンの作者・やなせたかしが描いた、母猫に育てられたライオンの物語。猫の絵本というよりは「猫的な愛」の絵本です。種を超えた親子の絆を描いた本作は、やなせたかし自身が「一番好きな自作」と語っていました。

ラストシーンの衝撃は、大人になってから読むほど深く刺さります。「やさしさ」が何を犠牲にするのかを、やなせは子ども向けの絵本で、一切の妥協なく描ききっています。

8. 『ちいさなねこ』── 石井桃子・文 / 横内襄・絵(1967年)

福音館書店の「こどものとも」シリーズから生まれたロングセラー。子猫が家を飛び出し、車や犬に脅かされながらも、最後は母猫に助けられる。ただそれだけの話。

しかし横内襄の絵が描く子猫の「怖さ」の表現は、大人の目で見ると凄みがあります。世界は子猫にとって巨大で危険で、わけがわからない。その感覚は、知らない街で一人暮らしを始めた頃の記憶と重なるかもしれません。

9. 『せかいいちのねこ』── ヒグチユウコ(2015年)

ぬいぐるみの猫・ニャンコが、「本物の猫」になりたいと願う物語。ヒグチユウコの緻密で幻想的な絵が、ぬいぐるみと本物の猫の境界を曖昧にしていきます。

この絵本が大人に響くのは、「本物になりたい」という願いの普遍性です。自分は偽物なのではないか。周囲の人のように「ちゃんと」生きられていないのではないか。インポスター症候群を抱える現代の大人にとって、ニャンコの旅路は他人事ではありません。ヒグチユウコの猫アートの世界については猫アートの全史。浮世絵からNFTまで、猫は常にアートの中心にいたも参考にしてください。

10. 『ノラネコぐんだん アイスのくに』── 工藤ノリコ(2017年)

最後に、肩の力を抜く一冊を。工藤ノリコの「ノラネコぐんだん」シリーズは子ども向けですが、大人が読んでも笑えます。悪だくみをしては失敗し、怒られ、反省する(ように見えてしない)ノラネコたち。その繰り返しが、不思議と癒しになる。

なぜ癒されるのか。それは「失敗しても大丈夫」というメッセージが、物語の構造そのものに埋め込まれているからです。何度やらかしても世界は終わらない。ノラネコぐんだんは、大人のための「大丈夫の確認装置」です。

絵本の「読み方」── 大人のための3つの提案

  • 声に出して読む ── 絵本は「音」で設計されています。黙読では気づかないリズムや韻が、音読すると立ち上がってくる。一人暮らしの部屋で、自分のために声に出して読む。それは意外なほど贅沢な時間です
  • 寝る前の5分に読む ── スマートフォンのブルーライトではなく、紙の絵本を開く。それだけで入眠の質が変わります。猫の絵本には激しい展開がないので、脳を興奮させずに眠りにつけます
  • 同じ本を繰り返し読む ── 小説は一度読めば内容がわかりますが、絵本は繰り返すほど発見がある。絵の細部、言葉の選び方、ページのめくりのタイミング。何度目かに、初めて気づくことがある

猫の絵本を買える場所

大きな書店の児童書コーナーに行けば、ここで紹介した本はほぼ揃います。ただし「大人が自分用に児童書コーナーで絵本を買う」ことに抵抗がある方は、以下の選択肢もあります。

  • オンライン書店 ── Amazon、楽天ブックスなら、対面の気まずさなし
  • 絵本専門店 ── クレヨンハウス(東京・大阪)は大人の絵本購入者が多く、気兼ねなく選べる
  • 古書店 ── 神保町の児童書専門古書店には、絶版絵本の宝庫がある
  • 図書館 ── まずは借りて読む。気に入ったら買う。この順番が一番失敗しない

FAQ

Q. 猫を飼っていなくても楽しめますか?

楽しめます。ここで紹介した10冊のうち、猫の飼育知識が必要な本は一冊もありません。むしろ猫を飼っていない人のほうが、絵本の中の猫に「会いに行く」感覚で楽しめるかもしれません。猫を飼えない環境にいる方にはなぜ”五感”で猫カフェを選ぶべきなのかもあわせてどうぞ。

Q. プレゼントにするなら、どの1冊がおすすめですか?

贈る相手によります。猫を亡くしたばかりの方には『ねこのき』。一人暮らしを始めた方には『なまえのないねこ』。年齢や性別を問わず贈れる「万能の一冊」は『100万回生きたねこ』です。大人向けの包装で贈ると、児童書であることを気にせず受け取ってもらえます。

Q. 10冊全部買うと、いくらくらいかかりますか?

ハードカバーの定価で購入した場合、合計で約15,000〜18,000円程度です。月に1冊ずつ買えば、1冊あたり1,500〜1,800円。カフェでコーヒーを2杯飲むのと同じくらいの値段で、何年も手元に残る本が手に入ります。まずは1冊、気になったものから始めてみてください。

まとめ

猫の絵本は、「少ない言葉で深く響くもの」を求める大人のための読書体験です。5分で読めるのに、何かが残る。それは猫という存在が持つ「語らなさ」と、絵本という形式が持つ「余白」が共鳴するから。疲れた夜に、スマートフォンの代わりに猫の絵本を開く。それだけで、一日の終わり方が変わります。

URAYAMA NO NEKOは、猫カルチャーを発信するブランドです。オリジナルグッズはこちら → SHOP

執筆:URAYAMA NO NEKO / Tetsu Onodera

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次