日本における猫関連の経済効果は、年間2兆円を超えるとも言われています。「ネコノミクス」という造語が生まれるほど、猫は経済を動かす存在になりました。しかし、その内訳を正確に把握している人は少ないのではないでしょうか。
この記事では、猫が生み出す経済圏を「フード」「グッズ」「観光」「メディア」「医療」「テクノロジー」の6産業に分解し、それぞれの市場規模と成長ドライバーを俯瞰します。猫はペットである以前に、巨大な産業エコシステムの中心にいるのです。
ネコノミクスの概要については、ネコノミクス約3兆円。猫が動かす日本経済の内訳を解剖するもあわせてご覧ください。
産業1:ペットフード ── 猫経済の最大セクター
猫関連産業で最も大きな市場がペットフードです。一般社団法人ペットフード協会の統計によると、日本のペットフード市場(犬猫合計)は年間約5,500億円。そのうち猫用フードは犬用を逆転し、約55%のシェアを占めています。
なぜ猫フード市場は拡大し続けるのか
- 飼育頭数の逆転。日本の猫の飼育頭数は2017年に犬を逆転し、2026年現在は推計906万頭(犬は684万頭)。飼育頭数の拡大がそのまま市場拡大に直結しています
- プレミアム化の波。「グレインフリー」「ヒューマングレード」「オーガニック」といった高価格帯フードの売上が急伸。猫の健康意識の高まりが、フード1袋あたりの平均単価を押し上げています
- 療法食市場の成長。腎臓病、尿路結石、アレルギーなど、猫特有の疾患に対応した療法食市場が拡大。動物病院経由の販売チャネルが確立されたことで、単価の高い療法食が安定的に売れる構造が生まれました
注目すべきは、Nala Cat(Instagram 440万フォロワー)が自身のペットフードブランド「Love, Nala」を立ち上げ、年商数億円を達成しているケースです。インフルエンサー猫がフードメーカーになる。これは猫経済の新しい形です。
産業2:猫グッズ ── 「猫好きの人」が買う市場
猫グッズ市場のユニークな点は、「猫を飼っている人」だけでなく「猫が好きな人」が顧客であるということです。猫を飼っていないけれど猫柄のマグカップを買う、猫のイラストのTシャツを着る。この「非飼い主マーケット」が、猫グッズ市場を他のペットグッズとは異質なものにしています。
| グッズカテゴリ | 主な商品 | 市場の特徴 |
|---|---|---|
| 飼育用品 | キャットタワー、トイレ、爪とぎ | 実需。飼い主のみ購入 |
| ファッション | 猫柄アパレル、アクセサリー | 非飼い主も購入。ギフト需要大 |
| インテリア | 猫オブジェ、クッション、時計 | 猫カフェ・店舗の空間演出にも |
| 文具・雑貨 | 猫柄ノート、マスキングテープ | 低単価・高頻度。衝動買いの王様 |
| アート | 猫の絵画、版画、写真集 | 高単価。コレクター市場 |
日本における猫グッズ市場は、飼育用品とファッション・雑貨を合わせると年間3,000億円を超えると推計されています。特に猫モチーフのファッションについては、猫モチーフのファッションブランド13選。ストリートからモードまでで掘り下げています。
産業3:猫観光 ── 猫に会いに行く旅
猫が観光資源として機能するという事実は、田代島(宮城県)と青島(愛媛県)が証明しました。過疎化が進んでいたこれらの離島は、「猫島」としてメディアに取り上げられたことで、年間数万人の観光客が訪れるようになりました。
猫観光の主要カテゴリ
- 猫島。田代島、青島、相島(福岡県)、佐柳島(香川県)など。猫に会うことだけを目的に、フェリーに乗って島を訪れる観光客が年々増加
- 猫の街。谷中(東京)、尾道(広島)、鎌倉(神奈川)。歴史ある街並みと猫が共存するエリアが、「猫散歩スポット」として人気に
- 猫カフェ。日本国内に推定500店以上。外国人観光客にとっては「日本でしかできない体験」の一つとしてガイドブックに掲載されています
- 猫寺・猫神社。豪徳寺(東京)、梅宮大社(京都)など、猫にゆかりのある寺社仏閣。御朱印ブームとの相乗効果で参拝者が増加
- 海外の猫観光地。イスタンブール(トルコ)、ドゥブロヴニク(クロアチア)、フェズ(モロッコ)。猫が街の観光資産として公的に保護されている都市も
猫観光の経済効果は、交通費、宿泊費、飲食費、お土産(猫グッズ)を含めると、国内だけで年間数百億円規模と推計されています。猫島については日本の猫島完全ガイド。人口より猫が多い島の地図で、猫の街については谷中銀座の七福猫と、路地裏に眠る猫のいる風景で詳しく紹介しています。
産業4:猫メディア ── 見る・読む・聴く猫コンテンツ
猫は、あらゆるメディアフォーマットでコンテンツを生み出しています。
映像
YouTube、TikTok、Instagramにおける猫コンテンツの総再生回数は、計測不能な規模に達しています。広告収入、スポンサーシップ、投げ銭を合わせた猫関連の映像コンテンツ市場は、グローバルで年間数千億円と推定されます。映画では、『猫の恩返し』(スタジオジブリ)の興行収入が約64億円、ミュージカル『CATS』の映画版はグローバルで約73億円を記録しました。
出版
猫関連書籍の出版点数は年間数百タイトル。写真集、エッセイ、漫画、実用書(飼い方・病気)まで、幅広いジャンルで安定した需要があります。岩合光昭の猫写真集は累計100万部を超えるベストセラーシリーズです。
展覧会・イベント
猫をテーマにした美術展や猫フェスの動員数は、年間数十万人規模。2024年開催の「ねこ休み展」は全国巡回で累計60万人以上を動員しました。入場料、グッズ販売、飲食を含めた経済効果は1イベントあたり数億円に達するケースもあります。
産業5:猫の医療 ── 高度化する猫のヘルスケア
動物医療市場は年間約5,000億円(犬猫合計)と推計されており、猫の占める割合は年々上昇しています。背景にあるのは、室内飼育の普及による猫の長寿命化です。平均寿命が15歳を超えるようになった猫には、人間と同じように慢性疾患の管理が必要になりました。
- 腎臓病(猫の死因第1位)の長期治療費:年間10万〜30万円
- ペット保険加入率の上昇:2026年現在、猫の保険加入率は約15%で年々増加中
- 高度医療(CT、MRI、放射線治療)の普及:1回あたり数万〜数十万円
猫の医療費の全体像については、猫を飼うのにいくらかかる?月額コストの全明細で詳しく解説しています。
産業6:猫テック ── テクノロジーが変える猫との暮らし
猫関連のテクノロジー市場(ペットテック)は、最も急速に成長しているセクターです。
- 自動給餌器・給水器。カリカリマシーン、PETKIT、CATLINKなど。Wi-Fi対応でスマホから遠隔操作可能な製品が主流に
- 見守りカメラ。Furboをはじめとするペットカメラ市場は年率20%以上で成長。おやつを飛ばす機能、AIによる行動検知など、機能の高度化が進行
- 自動トイレ。CATLINK、Litter-Robot、Petsafeなど。排泄の回数・量をアプリで記録し、健康管理に活用できるスマートトイレが普及
- GPSトラッカー。外出する猫の行動範囲を地図上で追跡。Catlogなど、首輪型のウェアラブルデバイスが登場
ペットテック市場のグローバル規模は2025年時点で約200億ドルとされ、2030年には350億ドルに達すると予測されています。その成長を牽引しているのは、単身世帯・共働き世帯の増加による「留守中のケア需要」です。
猫経済圏の全体マップ
| 産業セクター | 推定市場規模(国内) | 成長率 | キードライバー |
|---|---|---|---|
| ペットフード | 約3,000億円(猫用) | 年3〜5% | 飼育頭数増加・プレミアム化 |
| 猫グッズ | 約3,000億円 | 年5〜7% | 非飼い主マーケットの拡大 |
| 猫観光 | 数百億円 | 年10%以上 | インバウンド・猫島ブーム |
| 猫メディア | 数百億円 | 年15%以上 | 動画プラットフォームの拡大 |
| 動物医療(猫) | 約2,000億円 | 年5〜8% | 長寿命化・保険普及 |
| 猫テック | 数百億円 | 年20%以上 | IoT普及・単身世帯増加 |
合計すると、日本国内だけで猫関連の経済規模は1兆円を優に超えます。「2兆円」という数字は、間接効果(猫をきっかけとした引越し、リフォーム、住宅選び等)を含めた推計値です。
よくある質問(FAQ)
Q. ネコノミクスとは何ですか?
「ネコノミクス」とは、猫が生み出す経済効果を指す造語です。2015年に関西大学の宮本勝浩名誉教授が試算した「猫の経済効果 約2兆3,162億円」が話題となり、この言葉が広まりました。フード、グッズ、医療、観光、メディアなど、猫に関連するあらゆる産業の経済活動を包括する概念です。
Q. 猫経済で最も成長が期待されるセクターはどこですか?
ペットテック(猫テック)です。自動給餌器、見守りカメラ、スマートトイレ、ウェアラブルデバイスなど、IoTとAIを活用した猫関連テクノロジーは、年率20%以上の成長を続けています。背景には単身世帯の増加と、猫の健康管理に対する意識の向上があります。
Q. 猫関連ビジネスを始めるならどの分野が有望ですか?
レッドオーシャン(ペットフード、猫カフェ)を避けるなら、ペットテック関連、猫専門のサブスクリプションサービス、猫向けヘルスケア(フィットネス、メンタルヘルス)が有望です。また、猫グッズ市場における「非飼い主マーケット」は、ペット業界の知識がなくてもファッション・雑貨の文脈から参入できる余地があります。
まとめ
猫は、フード・グッズ・観光・メディア・医療・テクノロジーの6産業にまたがる巨大な経済圏を形成しています。国内市場だけで1兆円超、間接効果を含めれば2兆円規模。この数字が示しているのは、猫が「ペット」という枠を完全に超え、経済インフラの一部になっているという事実です。猫に関わるすべての産業は、猫の福祉を起点に設計されるべきでしょう。猫が幸せでなければ、この経済圏は持続しません。
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執筆:URAYAMA NO NEKO / Tetsu Onodera

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