「おすすめ猫チャンネル」と検索すると、判で押したように同じ名前が並びます。もちまる日記、もちまる日記、もちまる日記。
もちろん、もちまるは偉大です。ギネス世界記録を持つ、正真正銘の世界一の猫YouTuber。でも、日本の猫YouTube文化は、もちまる一強で語れるほど浅くはありません。保護猫の日常を淡々と映すチャンネル、芸人が全収益を寄付するチャンネル、箱に飛び込む猫を17年間撮り続けるチャンネル。それぞれにまったく異なる哲学があり、まったく異なる「猫との距離感」があります。
この記事では、登録者数ランキングをなぞるのではなく、「なぜそのチャンネルが面白いのか」という視点で、日本の猫YouTubeチャンネルを読み解きます。
猫YouTube前史 ── すべては「まる」から始まった
日本の猫YouTube文化を語るなら、まず「まる」に触れなければなりません。
スコティッシュフォールドのまるが飼い主mugumoguさんによってYouTubeに登場したのは2000年代後半のこと。もともとはブログに埋め込むための動画でした。ところが2008年、箱に飛び込む動画「特訓するねこ。」がYouTube Video Award Japan 2008の動物部門を受賞。翌年、翌々年も受賞し、3年連続という前代未聞の記録を打ち立てます。
チャンネル「I am Maru.」は登録者数88万人超、総再生回数5億5,000万回超。2026年現在、まるは18歳を超えるシニア猫ですが、今なお動画は更新され続けています。まるの功績は、「猫の日常をただ撮る」というフォーマットを確立したことです。演出なし、編集最小限、猫が箱に入るだけ。それだけで世界中の人が笑い、癒され、繰り返し再生する。猫動画の原型は、ここで完成しました。
猫チャンネル5つのジャンル
2026年現在、日本の猫YouTubeチャンネルは数千を超えます。その中から「本当に面白い」チャンネルを見つけるために、まずジャンルを整理しましょう。
① 王道・日常記録型
猫との日常生活を記録するスタイル。編集のテンポ、テロップの入れ方、BGMの選曲で個性が分かれます。代表格は「もちまる日記」「もち様の部屋」「ぽこ太郎&うま次郎」。飼い主の存在感を消し、猫を主役に据えるのが共通点です。
② 多頭飼い・にぎやか型
複数の猫が繰り広げる関係性のドラマが魅力。猫同士の序列、新入りの受け入れ、突然の仲良しエピソード。1匹だけでは生まれない「猫社会」の物語が視聴者を惹きつけます。「プチプチ動物園」「にゃんたまHOUSE」がこの系譜です。
③ 保護猫・社会派型
保護猫の預かりから譲渡までの過程を記録するチャンネル。感動ポルノに陥らず、保護猫のリアルを伝える姿勢が信頼を集めています。サンシャイン池崎さんの「ふうちゃんらいちゃんねる」が代表例で、チャンネル収益の全額を保護猫団体に寄付するという徹底ぶりです。
④ アート・クリエイティブ型
猫を被写体として映像作品に昇華するスタイル。「Pastel Cat World」のようにシネマティックな映像美で魅せるチャンネル、「Wakuneco.わくねこ羊毛フェルト」のように猫をモチーフにしたハンドメイド作品を制作するチャンネルがここに入ります。猫好きとクリエイティブ好きの交差点です。
⑤ 有名人・タレント型
芸能人やインフルエンサーが飼い猫を紹介するスタイル。先述のサンシャイン池崎さんのほか、桜 稲垣早希さんなどが知られています。既存のファンベースと猫の魅力の掛け算で、短期間で登録者を伸ばす特徴があります。
「もちまる日記」── なぜ世界一になれたのか
2019年10月24日生まれのスコティッシュフォールド、もちまる。飼い主である「下僕」さんが運営する「もちまる日記」は、2021年にYouTubeで最も視聴された猫としてギネス世界記録に認定されました。当時の総再生回数は約6億2,000万回。2026年現在では24億回を超え、登録者数は約214万人に達しています。
なぜ、もちまるだけが突出したのか。理由は3つあると考えます。
- 毎日投稿の圧倒的な継続力。ほぼ毎日、一定のクオリティで動画が投稿され続けている。これはYouTubeのアルゴリズムと極めて相性がいい
- 「下僕」という世界観の設計。飼い主を「下僕」、もちまるを「もち様」と呼ぶ設定が、視聴者に「猫が主人」という楽しい共犯関係を提供している
- 編集の抑制と丁寧さの両立。過度な演出を避けつつ、テロップやBGMで感情を適切にガイドする。「やりすぎない編集」のバランス感覚が秀逸
もちまる日記は、猫動画の「工業製品化」に成功した最初のチャンネルとも言えます。再現性のあるフォーマット、安定した品質、継続的な供給。それは批判されることもありますが、ひとつの発明であることは間違いありません。
もちまるのさらなる魅力については、もちまる日記という現象。ギネス認定猫YouTuberの功罪で詳しく取り上げています。
「ふうちゃんらいちゃんねる」── 猫動画で社会を変える
お笑い芸人サンシャイン池崎さんが運営する「ふうちゃんらいちゃんねる」は、猫YouTubeの中でも異色の存在です。
風神(ふうちゃん)と雷神(らいちゃん)は、どちらも保護猫施設から迎えられた猫たち。チャンネルでは2匹の日常が映されますが、特筆すべきはその収益モデルです。チャンネルの広告収益から必要経費を除いた全額が、保護猫団体に寄付されています。2024年2月には、累計718万円を「NPO法人 猫の森」と石川県獣医師会に寄付したことが報じられました。
池崎さんは保護猫のボランティア活動にも積極的で、一時預かりも行っています。「猫動画で稼ぐ」のではなく、「猫動画で猫を救う」という循環を実現した、数少ないチャンネルです。
「I am Maru.」── 17年間、箱に飛び込み続ける猫
前述のレジェンド猫・まるのチャンネル。2026年現在も更新は続いています。
まるの動画を改めて見返すと、その潔さに驚かされます。テロップは最小限。BGMもほとんどなし。猫が箱に入る、猫が袋に入る、猫が何かに飛び込む。それだけ。しかし、17年分のアーカイブを通して見ると、まるの身体の変化、動きの変化、表情の変化が映し出されている。それはもはや「猫の一生」のドキュメンタリーです。
飼い主mugumoguさんの「撮りすぎない、演出しない、ただ記録する」という姿勢は、現在の猫YouTube文化の土台にあるものです。すべての猫チャンネルは、意識するしないにかかわらず、まるの影響下にあると言ってよいでしょう。
なぜ人は猫動画を見るのか ── 3つの仮説
インディアナ大学の研究者ジェシカ・ガル・マイヤーズは、2015年に約7,000人を対象とした調査で、猫動画の視聴後にポジティブな感情が増加し、ネガティブな感情が減少することを報告しています。猫動画は単なる暇つぶしではなく、感情調整の機能を持っている可能性があるのです。
日本の猫YouTube文化が特に豊かな理由として、以下の3つの仮説が考えられます。
- 「飼えないから見る」需要。日本の住宅事情(ペット不可物件の多さ)が、猫動画の視聴需要を押し上げている
- 「見守る」文化との親和性。干渉せず、ただ存在を見守る。日本的な距離感が、猫動画のフォーマットと合致している
- 「短尺+癒し」の最適解。5分前後の猫動画は、通勤中やスキマ時間の感情リセットに最適なコンテンツ長
猫動画の進化 ── これからどこへ向かうのか
猫YouTubeチャンネルは、この15年で明確に進化してきました。
第一世代(2007〜2012年頃)は、まるに代表される「ただ撮る」時代。第二世代(2013〜2018年頃)は、多頭飼いチャンネルや保護猫チャンネルが登場し、「物語性」が加わった時代。第三世代(2019年〜現在)は、もちまる日記に代表される「プロダクション化」の時代です。毎日投稿、ブランド設計、グッズ展開。猫チャンネルはもはや個人の趣味ではなく、メディアビジネスになりました。
では次に来るのは何か。ひとつの兆候は、「保護猫×ドキュメンタリー」の台頭です。ふうちゃんらいちゃんねるのような社会性のあるチャンネルが支持を集めていることは、視聴者の意識が「かわいい」だけでなく「意味のある視聴」へとシフトしていることを示唆しています。
もうひとつは、ショート動画との融合です。YouTube ShortsやTikTokで猫の決定的瞬間を切り取る手法は、猫ミームの文化とも接続しながら、新しい視聴体験を生み出しています。猫ミームの歴史については、猫ミームの全史。なぜインターネットは猫に支配されたのかで詳しく取り上げています。
引用・出典
- YouTube Video Award Japan 2008〜2010 動物部門受賞記録
- ギネス世界記録「YouTubeで最も視聴された猫」認定(2021年)── 株式会社AKEY プレスリリース
- サンシャイン池崎 保護猫団体への寄付報告(2024年2月)── お笑いナタリー
- Jessica Gall Myrick, “Emotion regulation, procrastination, and watching cat videos online”(2015年、インディアナ大学)
- あちこちデータ 猫チャンネル登録者数ランキング
よくある質問(FAQ)
Q. 日本で最も登録者数が多い猫YouTubeチャンネルはどれですか?
2026年3月時点で、「もちまる日記」が約214万人の登録者数で国内トップです。2021年にはYouTubeで最も視聴された猫としてギネス世界記録にも認定されています。総再生回数は24億回を超えており、名実ともに日本最大の猫チャンネルです。
Q. 保護猫を扱っているおすすめの猫チャンネルはありますか?
サンシャイン池崎さんの「ふうちゃんらいちゃんねる」が代表的です。保護猫の風神・雷神との日常を配信しながら、チャンネル収益の全額を保護猫団体に寄付しています。保護猫のリアルな暮らしを楽しく伝えつつ、社会貢献にもつながるチャンネルとして高く評価されています。
Q. 猫YouTubeチャンネルが人気な理由は何ですか?
研究によると、猫動画の視聴はポジティブな感情を増加させ、ストレスを軽減する効果があるとされています。加えて、日本ではペット不可物件が多く「飼えないから見る」需要が大きいこと、5分前後の短い動画がスキマ時間の感情リセットに最適であることも、人気の理由と考えられます。
まとめ
日本の猫YouTubeチャンネルは、「ただ撮る」から「物語を紡ぐ」へ、そして「社会を動かす」へと進化し続けています。まるが切り拓いた道を、もちまるが世界に広げ、ふうちゃんらいちゃんねるが新しい意味を与えた。登録者数だけでは見えない、それぞれのチャンネルの哲学と猫への眼差しにこそ、面白さの本質があります。
猫チャンネルに限らず、猫がメディアに与える影響力はますます大きくなっています。猫インフルエンサーの世界については、猫インフルエンサーの時代。企業が猫に広告費を払う理由もあわせてどうぞ。
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執筆・編集: URAYAMA NO NEKO編集部

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