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世界の「猫の街」7選。猫と人間が共存する都市の条件

猫がただ「たくさんいる」だけでは、猫の街とは呼べません。

世界には、猫と人間が何百年もかけて独自の関係を築いてきた都市があります。宗教的な背景、港町としての歴史、行政の保護政策、そして住民の日常的なケア。「猫の街」には、猫が街に根づくための構造的な理由が必ず存在します。この記事では、世界7都市を取り上げながら、猫と人間が共存する都市に共通する条件を読み解いていきます。

目次

1. イスタンブール(トルコ)── 猫の都、17万匹が暮らす世界最大の猫共生都市

猫の街を語るうえで、イスタンブールを外すことはできません。推定17万匹の猫が暮らすこの都市は、世界で最も猫との共存が進んだ場所といっても過言ではないでしょう。

イスタンブールの猫文化を支えているのは、イスラム教における猫への敬意です。預言者ムハンマドが猫を大切にしていたという伝承が広く浸透しており、トルコ社会全体に猫を保護する意識が根づいています。トルコでは犬や猫の殺処分は法律で禁止されており、行政レベルでの保護体制が整っています。

街を歩けば、カフェのテラス席で眠る猫、駅の自動改札機の上でくつろぐ猫、グランドバザールの店先で番をする猫。イスタンブールの猫たちは「野良」でありながら、街全体がひとつの大きな家のように機能しています。2016年のドキュメンタリー映画『Kedi』は、この都市と猫の関係を世界に伝え、大きな反響を呼びました。

共存の条件

  • イスラム文化に根ざした猫への敬意と保護意識
  • 殺処分禁止の法制度
  • 住民による日常的なエサやりと健康管理
  • 行政が設置する「猫の家」や給水・給餌ステーション

イスタンブールの猫文化についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もどうぞ。
イスタンブールは猫の首都だった。世界一猫に優しい街の記録

2. コトル(モンテネグロ)── 中世の城壁都市を守る、港町の猫たち

アドリア海に面するモンテネグロの古都コトルは、UNESCO世界遺産にも登録された中世の城壁都市です。この街には無数の猫が暮らしており、「世界で最も猫が似合う街」と呼ぶ旅行者も少なくありません。

コトルに猫が多い理由は、港町としての歴史にあります。何世紀にもわたり、貿易船とともに猫が持ち込まれ、ネズミの駆除役として重宝されてきました。やがて猫はこの街の非公式なシンボルとなり、住民たちは冬場には猫を自宅に迎え入れるなど、地域ぐるみのケアを続けています。

地元の慈善団体「Kotor Kitties」は、猫の給餌、医療ケア、避妊・去勢手術を行い、野良猫の個体数管理と健康維持に取り組んでいます。旧市街の路地を歩けば、猫グッズを扱う土産物店がいくつも並んでおり、猫は観光資源としても街の経済に貢献しています。

共存の条件

  • 港町の歴史に由来する猫の定着
  • 住民による季節に応じた保護(冬場の室内避難など)
  • NPOによる避妊・去勢と医療ケア
  • 猫を観光資源として活かす地域経済の仕組み

3. 猴硐(ホウトン)(台湾)── 炭鉱の村を猫が救った再生物語

台湾北部の小さな村、猴硐(ホウトン)。かつては炭鉱で栄えたこの村は、閉山後に過疎化が進みました。しかし2000年代後半、村に200匹以上の猫が暮らしていることがSNSで話題になり、状況は一変します。

CNNが2013年に「世界6大猫スポット」のひとつに選んだことで国際的な知名度が一気に高まり、現在では年間数十万人の観光客が訪れる人気スポットになっています。駅と商店街をつなぐ橋には猫専用の通路が設けられ、土産物店では猫の鳴き声がBGMとして流れるなど、村全体が猫のテーマパークのような空間になっています。

猴硐の事例が示しているのは、猫が地域再生の起爆剤になりうるという事実です。過疎地域と猫の共存は、観光収入と地域アイデンティティの両面で大きな価値を生み出しています。

共存の条件

  • 過疎化した地域における猫の観光資源化
  • 猫専用インフラ(猫橋、シェルターなど)の整備
  • SNSと国際メディアによる情報拡散
  • 行政・住民・ボランティアの三者協働

台湾の猫文化をもっと深く知りたい方はこちら。
台湾・猴硐(ホウトン)猫村──炭鉱の町が猫の聖地になるまで

4. ローマ(イタリア)── 古代遺跡に住む猫、2000年の共存

ローマの中心部、トッレ・アルジェンティーナ広場。紀元前4世紀の神殿跡であるこの遺跡には、常時約250匹の猫が暮らしています。

1993年、遺跡に迷い込んだり捨てられたりした猫たちを救うため、リア・デクウェルさんとシルヴィア・ビビアンニさんの2人の女性がボランティアで保護活動を開始しました。現在は「Torre Argentina Cat Sanctuary」として正式に運営されており、猫の去勢・避妊手術、ワクチン接種、健康管理、里親探しまでを一貫して行っています。

ローマでは1988年に制定された法律により、5匹以上の猫が暮らす場所は「猫のコロニー」として公式に認められ、保護の対象となります。古代遺跡と猫という組み合わせは、ローマという都市が持つ「時間の積層」を象徴するような風景です。

共存の条件

  • 猫のコロニーを法的に保護する制度(1988年制定)
  • 市民ボランティアによる継続的な保護活動
  • 世界中からの寄付と支援ネットワーク
  • 遺跡という「人間が立ち入りにくい空間」が猫の居場所になる構造

5. エッサウィラ(モロッコ)── イスラムの教えと港町が育てた猫天国

モロッコの大西洋岸に位置する港町エッサウィラは、「モロッコで最も猫に優しい街」として知られています。

イスラム教における猫への敬意は、イスタンブールと共通する背景です。預言者ムハンマドが猫を深く愛していたという伝承は、モロッコの人々の日常にも浸透しています。港で水揚げされた魚のおこぼれを猫たちがもらう光景は、エッサウィラの日常風景そのものです。

エッサウィラの猫たちが他のモロッコの都市の猫と比べて毛並みが良いのは、住民による日常的なケアが行き届いている証拠でしょう。旧市街(メディナ)の狭い路地は猫にとって理想的な生活空間であり、建築構造そのものが猫の居場所を自然に生み出しています。

共存の条件

  • イスラム文化に根ざした猫の保護意識
  • 港町の食料資源(魚介類)による自然な給餌環境
  • メディナ(旧市街)の迷路的な建築構造が猫の生活空間として機能
  • 住民による継続的なケアと見守り

6. キーウェスト(アメリカ)── ヘミングウェイが残した6本指の猫たち

フロリダ半島の最南端、キーウェスト。この街の名物は、ノーベル文学賞作家アーネスト・ヘミングウェイが暮らした邸宅に住む約60匹の多指症(ポリダクティル)の猫たちです。

1930年代、船乗りからヘミングウェイに贈られた6本指の白猫「スノーボール」。その子孫たちが現在もヘミングウェイ博物館で暮らしており、オードリー・ヘプバーン、パブロ・ピカソなど著名人の名前がつけられています。

キーウェストの事例が興味深いのは、「個人の物語」が街全体の猫文化を形成したという点です。ヘミングウェイという文学的アイコンと猫が結びつくことで、猫は単なる動物ではなく、文化遺産の一部として保護されています。博物館には年間数十万人の観光客が訪れ、猫たちは街の重要な観光資源にもなっています。

共存の条件

  • 著名人との歴史的なつながりによる文化的価値の付与
  • 博物館という制度的な保護の枠組み
  • 観光収入による持続的な飼育・医療ケアの財源確保
  • 多指症という遺伝的特徴がブランドとして機能

7. 尾道(日本)── 坂道と路地が生んだ、日本の猫の聖地

広島県尾道市。瀬戸内海を見下ろす坂の街は、日本を代表する「猫の街」です。

尾道に猫が多い背景には、港町としての歴史があります。イスタンブールやコトルと同様に、海上交易の拠点には猫が集まりやすい。そして尾道独自の急な坂道と入り組んだ路地は、猫にとって理想的な生活空間を提供しています。

「猫の細道」と呼ばれる約200メートルの小径は、1998年にアーティストの園山春二氏が丸石に猫の顔を描いた「福石猫」を置き始めたことがきっかけで名付けられました。現在では尾道市内に1,000体以上の福石猫が点在し、猫をテーマにした美術館やカフェも集積しています。

尾道では「地域猫活動」が推進されており、野良猫の避妊・去勢手術や健康管理を地域住民とボランティアが協力して行っています。観光と保護のバランスを取りながら、猫と人間が共存するモデルを構築している点は、日本国内でも先進的な事例です。

共存の条件

  • 坂道・路地という地形が猫の生活環境として最適
  • アートと猫を融合させた「猫の細道」による文化的価値の創出
  • 地域猫活動による行政・住民・ボランティアの協働
  • 港町の歴史に根ざした猫との長い共存の伝統

猫の世界をもっと深く。URAYAMA NO NEKOの最新情報はInstagramで → @urayamanoneko

「猫の街」に共通する5つの条件

7つの都市を見てきました。猫と人間が共存する都市には、以下の5つの条件が共通しています。

条件1:港町であること

イスタンブール、コトル、エッサウィラ、尾道。7都市のうち4都市が港町です。歴史的に、貿易船とともに猫が運ばれ、ネズミ駆除の役割を担いながら定着していきました。港町には猫が根づく構造的な理由があるのです。

条件2:宗教・文化的な保護意識

イスラム圏のイスタンブールとエッサウィラでは、宗教的な教えが猫を保護する社会意識を支えています。ローマの法制度、キーウェストの文学的遺産。形は異なりますが、猫を守る文化的な基盤がどの都市にも存在します。

条件3:猫に適した都市構造

古い石畳の路地、遺跡、坂道、城壁。猫の街に共通するのは、猫が隠れたり、登ったり、日向ぼっこをしたりできる物理的な環境が豊富であることです。整然とした近代都市よりも、歴史的な建築が残る都市のほうが猫には住みやすい。

条件4:住民・ボランティアによる継続的なケア

どの都市にも、猫の給餌、医療ケア、避妊・去勢手術を担う住民やボランティア組織が存在します。コトルの「Kotor Kitties」、ローマの「Torre Argentina Cat Sanctuary」、尾道の地域猫活動。個人の善意だけでなく、組織的な活動が猫の健康と個体数を管理しています。

条件5:猫が経済的価値を持つこと

猴硐の地域再生、コトルの猫グッズ、キーウェストの観光収入。猫が街に経済的なメリットをもたらすことで、保護活動への投資が持続可能になります。「猫がいるから人が来る、人が来るから猫を守れる」という好循環が、猫の街を支えています。

引用・出典

イスタンブールには推定17万匹の猫が暮らしており、トルコでは犬や猫の殺処分は法律で禁止されている。街角には行政が設置した「猫の家」や給水ステーションが点在し、住民による日常的なケアと合わせて、都市全体が猫の生活圏として機能している。

出典: まいどなニュース / ターキッシュエア&トラベル

トッレ・アルジェンティーナ広場の猫シェルターは、1993年に2人の女性ボランティアによって設立された。現在は約250匹の猫が暮らしており、去勢・避妊手術、ワクチン接種、里親探しなどを一貫して行っている。

出典: 「地球の歩き方」特派員ブログ / JBpress

台湾・猴硐は2013年にCNNが選ぶ「世界6大猫スポット」に選出され、過疎化が進んでいた炭鉱の村が猫の観光地として再生を果たした。

出典: CNN / Study International

関連記事もあわせてどうぞ。

よくある質問(FAQ)

Q. 世界で最も猫が多い都市はどこですか?

推定17万匹が暮らすトルコ・イスタンブールが、世界最大の猫共生都市として広く知られています。殺処分禁止の法律、イスラム文化に根ざした猫への敬意、行政による「猫の家」設置など、制度と文化の両面で猫との共存が進んでいます。ドキュメンタリー映画『Kedi』(2016年)でその実態が世界に紹介されました。

Q. 猫と人間が共存できる都市にはどんな共通点がありますか?

本記事で取り上げた7都市に共通するのは、(1)港町の歴史、(2)宗教・文化的な猫の保護意識、(3)猫に適した都市構造(路地・坂道・遺跡)、(4)住民やボランティアによる継続的なケア、(5)猫が観光資源として経済的価値を持つこと、の5つです。いずれかひとつではなく、複数の条件が重なることで、猫と人間の持続的な共存が成立しています。

Q. 日本で「猫の街」として有名な場所はどこですか?

広島県尾道市が日本を代表する「猫の街」です。港町としての歴史、坂道と路地の地形、「猫の細道」に代表されるアートとの融合、地域猫活動による組織的なケアなど、世界の猫の街と共通する条件を多く備えています。そのほか、宮城県の田代島や福岡県の相島など、「猫島」と呼ばれるスポットも日本各地に存在します。

まとめ

猫の街は偶然には生まれません。港町の歴史、宗教や文化に根ざした保護意識、猫に適した都市構造、住民やボランティアによる継続的なケア、そして猫が経済的価値を持つ仕組み。この5つの条件が重なったとき、猫と人間の持続的な共存が実現します。イスタンブールからコトル、猴硐、ローマ、エッサウィラ、キーウェスト、そして尾道。7つの都市が教えてくれるのは、猫との共存は「優しさ」だけではなく「構造」によって支えられているということです。

URAYAMA NO NEKOについて

URAYAMA NO NEKOは、猫カルチャーを発信するブランドです。猫のいる風景、猫と暮らす空間、猫が登場するアートやデザイン。猫を取り巻く文化のすべてを、カルチャーメディアとして記録し、発信しています。オリジナルグッズはこちら → SHOP

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執筆:URAYAMA NO NEKO / Tetsu Onodera

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